語る事も特にない。  各自勝手に想像し、各自勝手に感じてください。 秘封蓮歌について  もちろん秘封倶楽部のブックレットストーリーから発想を得て始まったストーリーではありますが、世界観を表現するなら「ある巨大な事件を、それもほぼ大勢は決してしまった後の事件の顛末を、内側の事情など何も知らない一介の大学生が、そのちっぽけな価値観で捉えたストーリー」、と言うことになります。  はっきり言って、蓮子はただの「事件に巻き込まれた一般人A」、あるいは「利用されただけの何も知らない実験動物」です。  ただ、それはあくまで「ある巨大な事件」を中心に捉えた場合の話。  やはり秘封蓮歌は題名通り、徹頭徹尾「宇佐見蓮子」ただ一人のストーリーで、何の変哲もない、「大人」ならば誰もが経験しているんだろう物語だったのだと思います。 『あとがきに代えて・秘封蓮歌の設定について』 1999年。ビー・エイジアの前身、ウツヤグループとオオタ博士が、(心理学の観点から)異層世界およびアカシック・レコードの存在を示唆。精神学の始まりとされる。 2001年。米国にて異形の怪物が発現。「異形体(Dimension Error)」と呼称。あらゆる通常兵器を受け付けず、最終的に核攻撃にてこれを殲滅。  異形体の存在は秘匿され、米国は核実験中の事故と説明。 2011〜2013年。世界同時多発紛争(災害)。いわゆる「大崩壊(Big Calamity)」発生。東京を始め、世界各地の主要都市が壊滅。  以降、経済の建て直しに旧来型の民主主義では限界が生じ、代わってビー・エイジアを始めとした各企業が巨大化、市場原理主義による新たな国家体系が緩やかに構築されてゆく…… ----------------------- 予告編ではここまで ----------------------- (2030年。記録上、ビー・エイジア会長家分家、ハーン家第四子としてマエリベリー・ハーンが誕生。しかし、実際には父母、兄弟、誕生した病院も確認する事はできない。) ========== 改ページ ========== 宇佐見蓮子の能力について:  月と星(≒アカシックレコード)から「波」を受信し、自分の座標を完璧に把握する能力。これにより、幻想という本来現実世界にはありえないものを無視・否定し、無効化できる。  「波を操る」という母親の能力が変異して受け継がれ、操る事はできない代わりに、より「見る」事に特化したもの。  もっとも、彼女のこの能力や彼女自身も幻想をはらんだものであり、色々と矛盾している。そもそも世界とは本来、蓮子が思うよりもずっと矛盾を内包したもの、ということかもしれない。  その後蓮子がどうなったかは、プロローグ参照。うだつの上がらない大学(准)教授をやっている模様。生徒や同僚にも恵まれ、わりと充実しているらしい。うだうだとたまにメリーのことを考えているあたり、完全に諦めきれたわけでもなさそうだが。 ========== 改ページ ========== メリーの能力について(修正版):  メリーは実は、そこまで特別な能力を持っていたわけではない。  自我境界線が破綻していた彼女は、無意識に深層心理からアカシック・レコードへとアクセスし、同調していた。これにより、レコードに内包された様々な世界を見ていたものと思われる。  ただし、尋常の人間であれば、レコードにアクセスしたとしても脳がその情報量を処理しきれず、断片的に何かを理解する事はあっても、そこにある世界を見たり、あまつさえ触れたりする事などできない。  やはり彼女は、何らかの形で意図的に「脳の処理能力を人類種の限界かそれ以上まで引き上げられていた」と考えられる。この強化処理が彼女の精神を、自我境界を破綻させてレコードへのアクセスを可能とし、さらにレコードの情報量に彼女の精神が耐えられず自我境界がより不安定化、より深くまでレコードとアクセスできるようになり……という、かなり鬼畜なループ機構となっていた。  最終話においては、(レコード経由で)蓮子の精神にアクセス、蓮子までも自分と同様にレコードの中へと引きずり込んだ。結局、蓮子はそのような幻想を否定し、現実へと帰還。メリーはそのままレコードと完全同化した。 メリーの能力について:  自我境界を操る能力。ひとり人類補完計画。  これにより彼女は無意識にアカシック・レコードと同調し、そこに内包された様々な世界を見ていた。  最終的に肉体を捨てて精神だけレコードと完全同化したわけだが、その後どうなったか、どうなるかは、現人類に想像できるものではない。  もちろん、自然に生まれた人間にこんな芸当は不可能。何らかの形で意図的に持たされた能力と考えられる。  一個の人間が内包できる機能の限界をはるかに超えており、生物学的にはともかく、彼女を「人」に分類できるかははなはだ疑問。実際、彼女は能力が覚醒してゆくのに伴い、その精神を破綻させていった。 ========== 改ページ ========== メリーと八雲紫、幻想郷 / 八雲の怪物姫と八雲の大妖:  メリーの能力、それは自我境界の破綻による、アカシック・レコードとの同調。最終的には完全に同化した。  本人が覚えていたかどうかはともかく、メリーは毎夜幻想郷の夢を見ていた。  幻想郷とはメリーの心「そのもの」であり、同時にメリーと“同調”したアカシック・レコードの「部分」。  そして、八雲紫とはメリーの心の内、(蓮子と共に)夢の世界へ行く事を望む「部分」だった。  また、八雲紫も八雲紫でおそらくアカシック・レコード(=世界そのもの)と“同化”していたため、メリーもまた八雲紫の、ある「部分」だった。  まるでクラインの壷のように、一方が一方を内包しながら、同時に内包されてもいた、と言える。  作中では、八雲紫が過去にすでに消滅、それに伴って幻想郷も崩壊し、隔離されていた幻想が放出されて現実世界と同化していたが、これは最終話でメリーが蓮子に幻想を完全否定された事で、メリーの中の八雲紫(=蓮子と共に夢の世界へ行く事を望む部分)が壊された事によるもの。「現在」のメリーの心が、彼女の心を左右する蓮子の行動が、「過去」の世界に影響を及ぼしていた、という言い方もできる。  少々ややこしいが、全宇宙、全時間を内包するというアカシック・レコードが四次元以上の空間であると仮定すれば、このようなタイム・パラドックスも別段驚くには値しない。 <簡易年表>  2030年、「マエリベリー・ハーン」生誕。過去の世界に、同時存在・八雲紫も生まれる。 (はるか古代、まだ幻想と現実の境などほとんど無かった時代、境界の妖怪が生誕。 / おそらくヒトが智慧や知識を得て、物事に名前を付けるなどして区別していくのに伴って、区別の化身である存在が発生していったのだと思われる) ↓ 2035年頃、最初の事件が起こり、メリーが自身の異常性を認識し始める。八雲の怪物とあだ名される。 (はるか神代、境界の妖怪が己の能力を認識し、操るようになる。この頃から八雲の妖怪とあだ名される。) ↓ 2040年頃、虐待を受けつつ各家をたらいまわしにされ、異常な形ではあるがメリーの精神が安定化してくる。 (平安時代頃、妖怪としてある程度の地位を確立してきた八雲紫が、日本のとある地に理想郷を形成。) ↓ 2049年春、メリーが宇佐見蓮子と出会い、「秘封倶楽部」を結成。 (明治時代頃、八雲紫が現実世界から理想郷を隔離し、幻想世界「幻想郷」が確立。) ↓ 2049〜2050年、メリーにとって唯一の、そして最も充実した日々。 (明治初期〜昭和平成、幻想郷絶頂期。博麗霊夢や霧雨魔理沙などの英雄も現れる。) ↓ 2050年春、メリーが博麗神社での一件で蓮子から拒絶されたと感じる。この頃から精神崩壊と能力の暴走が始まる。 (平成の末期、八雲紫および幻想郷の崩壊が始まる。) ↓ 2050年夏、メリーが蓮子から幻想を完全否定され、決別。肉体を捨てて精神だけレコードと完全同化。 (2011年、八雲紫消滅、幻想郷崩壊。隔離されていた幻想が一気に放出され、現実世界で「大崩壊」が発生。)  幻想郷とはマエリベリー・ハーンそのものであるため、そこの住人達は皆、無意識的に宇佐見蓮子のことを知っていた。そして、崩壊を免れた一部の者は、それが「宇佐見蓮子が原因」によるものだと、知っていたのだった。  もっとも、その不満を蓮子にぶつけるか、あるいは和解し、また見守るかは、各自それぞれだったが。